叙情派プログレの元祖CAMELの第4作『MOONMADNESS』、そしてCAMEL系シンフォの宝庫オランダよりTRIONの13年作『FANFAIR FANTASY』をご紹介します。
イギリスのプログレッシヴ・ロックグループCAMELはプログレ全盛期の70年代初頭に登場し、ファンタジックなメロディと繊細かつロマン溢れる演奏を聴かせる、いわゆる叙情派プログレを演奏し人気を博しました。
この叙情派プログレは数あるプログレの演奏スタイルの代表的な一つとして、現在に至るまで多くのフォロワーを生み続けています。
その元祖と言うべきバンドであるCAMELも、CARAVANからのメンバーを多く擁しジャズロック/フュージョンの色合いを強めた70年代末期、オリジナルギタリストのアンディ・ラティマーのソロ・プロジェクト的な意味合いが強くなった80年代~現在に至るまで音楽性を変化させてはきましたが、いずれにおいてもファンタジックな世界観と胸に迫るロマンティックな演奏というCAMELサウンドの根底は揺るぎなく存在し続けています。
そんなCAMELが活動初期にあたる76年に発表した第4作『MOONMADNESS』は、彼らの最高傑作との呼び声も高い『SNOW GOOSE』の次の作品にあたり、バンドとして最も脂の乗っていた時期に発表された作品です。
前作が小説『白雁』のストーリーを音で綴るというスタイルを取ることで、作品の世界観を広げる効果を上げていたのに対し、本作はバンド自身の創造性が純粋に発揮された作品であり、彼らのプログレバンドとしての高い力量を示した作品と言えます。それではこの作品からは、彼らのファンタジックな持ち味が存分に現れたこの曲を聴いてみましょう。
ジャケットそのままの幻想的な演奏と切ないまでの哀感に満たされたメロディがひたすら美しい名曲ですねー。私は初めて前作『SNOW GOOSE』を聴いた時には正直あまりピンと来なかったのですが、この作品を聴いた時には「やるなぁ、キャメル」と思わず唸ってしまったのでした。聴き手のイマジネーションを刺激するプログレとしては間違いなく一級品です。
さて、キャメルを元祖とするこの叙情派スタイルを受け継ぐグループは世界中に数えきれないほど多く存在しますが、今回はそんな中でも一際クオリティの高いキャメル・フォロワーがひしめくオランダからの新鋭TRIONをご紹介しましょう。
オランダのプログレと言えばやはりFOCUSの活躍が広く知られるところですが、オランダのメロディアスな叙情派バンドFINCHを祖として、実は80年代から00年代に至るまでキャメルタイプの良質な叙情派バンドが数多く生まれてきました。
そんな中、98年のデビュー以来00年代のキャメルフォロワーとして最高峰に君臨し続けるのが、FLAMBOROUGH HEAD。女性ヴォーカルの存在や現代のバンドらしいヘヴィネスを加えたサウンドによって、往年のCAMELをモダンでスケール感たっぷりに再現したかのようなサウンドを特徴とします。
FLAMBOROUGH HEADだけでもCAMELを受け継ぐグループとしては十分なものを持っているのですが、そのFLAMBOROUGH HEADのkey奏者を中心とするプロジェクト・バンドTRIONは、さらに一歩往年のCAMELサウンドへと歩み寄った素晴らしい演奏を聴かせてくれるんです。
では、TRIONの3作目となる13年作『FANFAIR FANTASY』からのナンバーを聴いてみましょう。これはきっと驚くこと請け合いですよ!
いかがですか?哀愁いっぱいのオルガン、さざ波のように寄せては返すシンセ、リリシズム溢れるフルート、そしてCAMELのギタリストA.ラティマーそのものと言うべき甘いトーンと流麗なフレーズを聴かせるギター!まさによみがえる70年代CAMELと言うべきサウンドを体現していますよね~。じわじわと湧き上がってくるメロトロンも演奏を叙情的に支えています。これは上でご紹介した『MOONMADNESS』に入っていても違和感がないほどの再現度です。
前述のとおりCAMELの叙情派サウンドに魅せられたバンドは世界中に数多く存在してきましたが、このTRIONこそ数多のキャメルフォロワーの頂点に位置するバンドと言えるかもしれません。70年代にCAMELによって生み出されたスタイルが、40年を経た現在でもほぼ変わらない形で受け継がれてきたのだと思うと、なかなか感慨深いものがありますよね~。ファンのみならずプログレを志すミュージシャンによってもいかにCAMELというバンドが愛されてきたのかが、本作を聴くと伝わってくるようです。傑作!
2枚組、直輸入盤(帯・解説付仕様)、デジタル・リマスター
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
1枚は無傷〜傷少なめ、1枚は傷あり
Andrew Latimerを中心にファンタジックなアプローチでプログレッシブ・ロックの重要バンドに位置づけられるイギリスのバンドの74年2nd。名盤となる次作「The Snow Goose」に見られるファンタジックさと気品に比べるとPeter Bardensのキーボードが若干おとなしく、その代わりAndrew Latimerのギターが前に出て渋く泣いているようなイメージであり、全体的にややハードな雰囲気が漂っているものの、その音像は単純なハード・ロックとは全く違う甘みを感じるものであり、フルートの効果的な使用も相まって、マイルドな質感を醸し出しています。自作につながるようなファンタジックさの片鱗も見え隠れする素晴らしい作品です。
Andrew Latimerを中心にファンタジックなアプローチでプログレッシブ・ロックの重要バンドに位置づけられるイギリスのバンドの75年3rd。オーケストラ・セクションを迎え、ポール・ギャリコの小説「白雁」をコンセプトに掲げたアルバムであり、全編インストルメンタルによる彼らの代表作の1つです。特にAndrew Latimerによるフルートの優しげな調べが印象的な「ラヤダー」は、澄んだシンフォニック・ロックのお手本として有名であり、同じくフルートを扱いながらもアプローチの全く違うJethro Tullとの比較で論じられています。決して派手さはないものの優しさとロマンに溢れており、肌触りの良いギターやPeter Bardensによるキーボードの音色、リズムセクションの軽快さ、そしてインストルメンタルのハンディを感じさせないメロディーとアレンジの上手さで御伽噺の世界をマイルドに表現しきった名盤です。
廃盤、紙ジャケット仕様、復刻巻帯付き仕様、SHM-CD、2014年DSDマスターよりHRカッティング、、High Resolution Cuting方式、ターコイズブルー・レーベル採用、ボーナス・トラック1曲、定価2667+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
Andrew Latimerを中心にファンタジックなアプローチでプログレッシブ・ロックの重要バンドに位置づけられるイギリスのバンドの76年4th。前作「スノー・グース」と並んでファンタジックなCAMELの音楽性をダイレクトに伝える作品であり、Andrew Latimerの消え入るような儚げなフルート、Peter Bardensの堅実かつ時に奔放なキーボードの妙技、そして軽やかに変拍子を紡ぐリズムセクションのトータル感で聞かせます。シンフォニックに、そしてジャジーに、肌触りの良いマイルドさを持った傑作であり、ゆったりと身を任せられるような自然なサウンドが一貫して個性的な1枚です。
紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、定価2039+税
盤質:全面に多数傷
状態:並
帯無
帯無、目立つカビあり
英国出身、Peter bardens、Andy Latimerを擁するファンタジックなプログレッシヴ・ロック・グループによる77年作5th。本作よりベーシストRichard Sinclair、サックス奏者Mel Collinsの二人が参加しています。特にRichard Sinclairはヴォーカリストとしても貢献していて、その甘く繊細な歌声はCAMELの世界観と見事にマッチ。親しみやすいメロディが際立つ一方、インスト面ではよりジャジーな方向へと音楽性をシフトしています。表情豊かで柔らかな音色を奏でるサックス、変幻自在に躍動するベース・ラインが、透明感溢れるキーボード・サウンドに溶け込んだジャジーなアンサンブルを奏でており、甘いヴォーカルと伸びやかなギターは叙情的なメロディを謳い上げます。「Elke」ではBrian Enoがムーグ・シンセで参加、アンビエント要素を加えてより神秘的なCAMELを聴くことが出来るなど、聴き所は多数。次作『BREATHLESS』と本作でしか聴けない貴重な6人編成、『SNOW GOOSE』など代表作を聴いた方におすすめしたい一枚です。
英国叙情派プログレを代表するバンドによる78年作。CAMELらしい叙情的なサウンドと、元CARAVANのリチャード・シンクレアによるカンタベリー・ロックを彷彿させるノーブルなヴォーカルの組み合わせが素晴らしい、CAMELとCARAVANの美味しいとこ取り的な名作!
第二次世界大戦後、南方の島に取り残された一兵士(小野田寛郎氏/ヌードとはオノダのもじり)の実話を音楽化。人間味に溢れたドラマティックなサウンド・ストーリー。81年作。
アンディ・ラティマー(g)のヴォーカル・ナンバーを中心に、80年代に相応しいポップなサウンドを収録。82年作。
キャメルの傑作のひとつに数えられる永遠の名作。ジョン・スタインベックの「怒りの葡萄」をモチーフにした音楽文学。
FLAMBOROUGH HEADのEddie Mulder(g/etc.)とEdo Spanninga(key/etc.)、ODDYSSICEのMenno Boomsma(dr)によるオランダのシンフォ・プロジェクト、シンフォ・ファンの間で話題を呼んだ03年デビュー作から4年を経てリリースされた07年作の2nd。CAMELをはじめとする70年代の名バンド達のサウンドを継承し、メロトロンを巧みにフィーチャー、壮大で感動的な音世界を作り上げた傑作!
直輸入盤(帯・解説付仕様)、ボーナス・トラック2曲、定価2857+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
軽微な折れあり
フロイドのリリシズムはこの人が居ればこそですね。「虚空のスキャット」「Summer 68」が好きなら、このソロ作もまた涙ものです。
RICHARD WRIGHT(RICK WRIGHT)/WET DREAM
A24090(ONE WAY)
2520円 (税込2772円)
在庫あり
極上音質のライヴ・アーカイヴ音源集!デモ音源1曲、73年〜74年のBBC音源7曲、73年〜75年のライヴ音源13曲、計21曲を収録!
HATFIELD & THE NORTH/HATTITUDE
HATCOCD737502(HATFIELD AND THE NORTH)
3590円 (税込3949円)
売り切れ
ずばり70年代ブリティッシュ・ロック・ファン必聴の激レア発掘音源!とめどなく溢れる叙情美とバーバラ・ガスキンを彷彿させる女性ヴォーカル。グッときちゃいますよ〜。
AACD056(AUDIO ARCHIVES)
1990円 (税込2189円)
在庫あり
そのバンド名に違わず、「英国らしさ」を最もイマジネーション豊かに音像化した一枚ではないでしょうか。魔法のようにファンタスティックなメロトロンのプレイも圧巻の大傑作!
BVCM37613(82876702692)
1490円 (税込1639円)
「太陽と戦慄」期クリムゾンやヘンリー・カウ的な攻撃性を軸に、HF&Nに通ずる繊細さと緻密さ、フランスらしい芸術性や演劇性を融合させたサウンドは、素晴らしき完成度!
VOC1031(VOCATION)
2850円 (税込3135円)
在庫あり
「太陽と戦慄」期クリムゾンやヘンリー・カウ的な攻撃性を軸に、HF&Nに通ずる繊細さと緻密さ、フランスらしい芸術性や演劇性を融合させたサウンドは、素晴らしき完成度!
VOC1031(VOCATION)
2090円 (税込2299円)
まさか00年代のエストニアに、ソフト・マシーンやハットフィールドのDNAを継ぐカンタベリーなグループが生まれるとは・・・。硬質さとリリシズム、それを包むエストニアならではの透明感。絶品です。
MKDKCD0029(MKDK)
2390円 (税込2629円)
売り切れ
ハンガリーで今最も繊細でイマジネーション豊かなサウンドを鳴らすこの新鋭グループ、もう聴きました?全シンフォ・ファンの皆様へ、カケレコが自信をもってオススメ!
192914872986(YESTERDAYS)
1990円
1592円 (税込1751)
438円お得!
在庫あり
まさか00年代のエストニアに、ソフト・マシーンやハットフィールドのDNAを継ぐカンタベリーなグループが生まれるとは・・・。硬質さとリリシズム、それを包むエストニアならではの透明感。絶品です。
KRC9001(KAKEHASHI RECORDS)
2990円 (税込3289円)
売り切れ
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