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5月に妊娠がわかって、雪の季節に逃げ出すって、相当我慢したんでしょう。お腹の子は大きくなっているのに…。「スケルトン」の歌詞が本当に切ないです。金と暴力の実にひどい男から逃げる母子の逃避行がたんたんと語られます。母ひとりで子を育てるって、相当つらいはず。でも子どもと自身の未来を守るため、ウエストコーストに夢を賭ける母子です。こんな曲をわが国の歌手音楽家が書けるんでしょうか。そして家族の最小単位は、男と女ではなく、母と子…なんです。すごいな。
明るい曲はハチャメチャに明るいです。ファーストと「パイレーツ」の頃のリッキー・リーは「天才」だったと思います。ベースがチェック・レイニー、ドラムズがスティーブ・ガッドだってだけでも面子を想像してください。ここに参加してなけりゃステイタスがない、とばかりに西海岸の強面音楽家が大挙参加しています。ひとりの娘っ子歌手音楽家のために。だって彼らにこんな曲は書けないから、です。ジョニ・ミッチェル以来の破格の音楽家がリッキー・リーだったでしょう。
リッキー・リーの舌足らずな歌唱にしろ、バックの緊張感にしろ、米国音楽を好きな人なら、体の芯から何か言いたい衝動が沸き上がる音です。80年代の売れ線アレンジに汚染もされていないし、本当に良い盤だと思います。2024.05.13
きょうは町内の海岸清掃の日でした。ただでさえ韓国の漂流物が多い地区で、能登半島地震の影響の漂流物が増えて、けっこうな運動量だったです。自分の部屋の掃除は苦手ですが、公共空間の掃除はけっこう好きです。成果が目に見えるのと、掃除した後の気持ちよさからです。ほんと、トシをとってきたと思います。ごみって、拾う人にしか見えないんじゃないか、というのがわたしの持論です。捨てる人って、おかしいでしょ。自分のごみが公共空間のごみに変わっても実態は「ごみ」ですから。公共空間に投げ捨てると「ごみ」に見えなくなるって、自分の知覚を疑ったほうがよろしいと思います。
74年にこの盤が出た時、わたしは魅力がわからなかったんです。爆発的に売れていました。ぼてっと膨らんだロック界を大掃除する意味あいだったと今では思います。「アイ・ドント・マインド」の性急なカッティングには、耳の穴を掃除しているような爽快さを感じます。しかも倍速で演奏する…。録音日時をチェックすると、ほとんど一日二日のセッションで進行していったことがわかります。モノラルにしたのもセッティングとミックスが簡単、という理由でしょう。
カバー写真は海で撮影されているんです。しかも大風の日に。ええい、風なんかいいから撮っちゃえ、撮っちゃえ。リー・ブリローとビッグ・フィギュアは、砂が目に入るのが嫌で下向いています。2024.05.12
レオン・ラッセルは巨大な存在感の人で、彼の声がするだけで、そこに数十人のコーラス隊がひかえているような錯覚がします。華やかな人とはこういう人を言うんでしょう。一方のマーク・ベノは、寂寞感と孤独の人。ラッセルの存在で出来た日陰をベノが埋めているような不思議な凸凹感覚の音楽です。
参加音楽家のクレジットがありません。カール・レイドルが写真としてクレジットしてあるので、彼がベースであることは間違いないようです。レオン・ラッセルが弾くピアノのデモを、リタ・クーリッジが聴いて、いやこっちがいい、さっきのがいい、と会話したあと本編が始める「ストレイト・ブラザー」が、かっこいいです。わたしは「スワンプ」と書いて、何かレビューしたような気になるのは嫌なんですが、ここらへんの人の密度は、この時期と場所特有のものです。英国でカンタベリーが果たしたような人の結びつきが、米国南部でありました。白人、アフリカ系、ネイティブをスープにしたような音です。
落ち着くし、開放されます。日陰のベノの魅力はギターとコーラスでしっかりとあります。ラッセルの「シェルター・ピープル」、ベノの「雑魚」が好きな人はぜひ。2024.05.11
ルー・グラムを、フォリナーに抜擢されたポッと出のシンガーと見ていたかたはいらっしゃいませんか。かつてのわたしがそうでして、今では恥ずかしいかぎりです。あまり流通していない「ブラック・シープ」を聴いて、わたしの考えはがらりと変わりました。UKの正統的なハードロックを継承する、ブルーズ・シンガーというイメージに。フォリナーは、意図的にブルーズを外した音づくりをするグループです。べたべたしないところは良いのですが、ルー・グラムにとっては、だんだん気持ちがかさかさになっていったのではないかと推測します。
フォリナーであまりやれなかった硬派の音。何が良いかというと、ニルス・ロフグレンのギターです。弾き過ぎず、カッティングとサステインで聴かせるギターです。曲はグラムとブルース・ターゴン(ベース)が書いています。おそらくは作詞がグラムの担当だったと思うので、アレンジなどはターゴンが主導したのではないかと思います。また、ドラムズはグラムの兄弟、ほかにギターでクレジットされているリチャード・グラマティコという人も、ルー・グラムの兄弟でしょう。いわば彼のファミリーとロフグレンで作り出した音なのです。
ルー・グラムの伸び伸びした歌声を聴いていると、安心できたプロジェクトなんだろうな、と。そんなことを感じさせます。2024.05.10
もうモビー・グレープの話なんか出したら失礼なんじゃないだろうか。素晴らしくノリの良い1曲目のロケンローを聴いて、そんなことを思います。ピーター・ルイス、本業は画家。このCDを持ったときの感覚は、重いな…と。ルイスの描いた絵があしらわれた歌詞が全曲ついているブックレットがついています。その重量がCDに加算されているからです。モビー・グレープのリーダー格にして、全世界のプロのバンドから尊敬される存在。でもルイスが栄光と無縁の人であることも全世界が知っています。すっかり音楽から足を洗っていながら、これだけのクオリティの曲を提供できる、とは。
脱力した緊張感、と申しましょうか。モビー・グレープで聴けた、アンビバレンツな魅力がそのまま味わえる盤です。からっとした西海岸音楽では全然ありません。きれいなコーラスを従えていながら、不吉な影をちらつかせる作風です。演奏の上手いベルベット・アンダーグラウンド…。なんて形容したらいいのか、さきほどからキーボードが止まってしまっています。和音の感覚が独特なんでしょうね。30年のブランクがありながら、近所に住んでいるドゥービーのメンバーが手伝ってくれる人徳が滲み出ています。一聴したときから、ヘビーローテになると感じました。2024.05.09
イニシエーションと聞くと、南のほうの国で青年が足首につるを巻き付けてやぐらから飛び降りる、あれを連想するわたしです。5月は、わが地方ではイニシエーション儀式の季節なのです。しかしここで言っているイニシエーションは、そちらの意味ではなく、「はじまり」の意味。俺はリアルな人間になって、音楽界の大掃除を始めるのだ。そんな決意にあふれた音です。ところがどっこい、トッドには代表するようなシングルヒットがありません。代表するプロデュース成果はいくつもあるというのに…。これはロック界の七不思議です。
トータルで67分もあります。アナログの頃、2、3回聴くと、溝が切れてしまうレコードでした。溝が切れる、というのは、溝が浅くて、レコード針の圧で隣の溝とつながってしまうことを言います。だからB面をまともに聴いたことがありませんでした。ああ、シンセサイザー音楽なのね、と訳知り顔のあなた。この時期シンセサイザーが単音しか出なかったことをご承知ですか。5本の指で鍵盤押しても最後の指の音しか発信しないのです。和音を出したけりゃ、和音の数だけ多重録音する必要があったんです。
A面のバンドサウンドには、エドガー・ウインターがサックス吹いているは、デリンジャーがギター弾いているは、ダン・ハートマンがベース弾いているわ。とんでもないことになっています。良いんです、A面が…。2024.05.08
映画「ワン・ラブ」公開に間に合うよう、アイランド期11枚のウェイラーズのCDを手元に置いて聴けるようにする。これが昨年末立てたプランでした。きょう、「キャッチ・ア・ファイア」が来て、全部揃いました。さあ、これから聴き倒す番です。改めて感じたのが、旧知の曲が多いことです。それだけラジオでかかっていたんですね。「アップライジング」は、ほとんど知らないといっていい盤なのに、それでも数曲は知っていました。マーリーの白鳥の歌になったレコードです。この頃、レゲエはすでに下火でした。
「カミニン・フロム・ザ・コールド」の中で声がかすれて出ない箇所があります。繰り返される「イン・ディス・ライフ」も半分は声が出なくて誤魔化しています。それぐらい彼の病状と痛みは進行していたのでした。たぶん立っていられないぐらいに…。元気一杯のマーリーを期待して聴く盤ではありません。これをリゾート音楽にするなら…どうぞご自由に、です。よれよれのマーリーを、アイ・スリーのコーラスとウェイラーズの凄みあるリズムが支えています。
「リデムプション・ソング」は、精神的奴隷状態から、俺は音楽で救いを届ける、という内容です。どうかいっしょに歌ってくれないか、と締めくくられます。シリアスに書き過ぎたかも知れません。マーリーは死を目前にしても楽観していたことは間違いないです。2024.05.07
一枚ものの「オン・ツアー」を、自分はエリック・クラプトンの活動歴の一部としてずっと聴いていました。あたかもデレク・アンド・ザ・ドミノズの前哨戦だったかのように。しかしデラニー&ボニーの各レコードを探さなくとも聴けるようになり、この当時の南部の位置関係もあらかたわかってきて、このデュオの成し遂げた仕事の大きさに驚くばかりです。一枚ものには入っていなかった「ギミ・サム・ラビン」を各セットの冒頭に持ってきています。この曲を比較すると、どれだけこのツアーが日増しに受け入れられていったかわかる仕組みです。南部の音はルーツ音楽であるとは言われますが、ゴスペルやカントリーを正統に演奏しただけではこれだけの支持を得られなかったでしょう。英国も米国も、白人音楽もアフリカ系音楽もなく、個人個人の生活を認めて光をあてることが、彼らの活動の目標だった気がします。
見事なまでに暗さがありません。デラニーとボニーの歌声には奮い立ちますし、ギタリスト3人の掛け合いには恍惚としますし、何より盤石のリズムが聴かせます。クラプトンもデイブ・メイスンも楽しくて仕方なかったでしょう。最後にクラプトンの話に戻すと、わたしは彼がいなかったらデラニー&ボニーもJJケールもオールマン・ブラザーズさえも通り過ぎていたと思います。US音楽シーンのイノベーションを嗅ぎ付けてくれて、クラプトンには感謝しかありません。2024.05.06
なぜ音楽を聴くのかと言いましたら、…好きだから。言い換えると豊かになりたいから…です。ただし、わたしには、キャンプをしたり、うどんを打ったり、畑をしたり、という別な豊かさもあるので、正直音楽だけで豊かなわけでもありません。職業や虚栄心で音楽を「書く」立場にならなくて、本当に良かったと思います。いますでしょ、こんなに聴いているんだ、と自慢するレビュワーの人。新録音も新譜も聞かなくていい。豊かだと思うジャンルだけ掘り下げられるのは幸せです。トム・ヤンスは、いい歳になってから聴き始め、とりこになった人で、これはわたしには珍しい例です。だって子どもの頃、レコードを買うお金がない頃の音楽のほうが耳には残るじゃないですか。
リトル・フィート人脈が大挙参加していますし、デイビッド・リンドレーが弾き、チャック・レイニーとハーベイ・メイスンまで加わっています。歌手作曲家の作風だけでなく、バンド・サウンドも素晴らしい。そしてアクースティック・ギターが実に美しいレコードです。輪郭の太い音を聴いていると安らぎ、体温が上がってきます。
トム・ヤンスは、子どもの目を、神聖で、嘘のつけない存在と思っているようです。子どもと犬には嫌われたくない、と思っている自分にはよくわかります。2024.05.05
このレコードが登場したとき、フュージョンという言葉はまだありませんでした。ハービーの言葉によれば、ソウルやR&Bは莫迦げた音楽だと思っていたんだそうです。要するに一般大衆の音楽で、至高体験を求める自分には縁がない、と。自分のつくった音楽で人々が踊るのを見た時、世界が変わって見えたとも語っています。ジャズはジャズで素晴らしいジャンルなんだけど、聴く人が限られる。ハービーは音楽で世界を変えたい人だったんですね。のちにビル・ラズウェルと共演して世界制覇したときも、そんな感じだったんでしょうか。
15分の「カメレオン」は、踊るためのちょっとユーモラスなファンク。10分の「スライ」では、だいぶ様相が異なります。クラビとリズム・セクションの揺れを最小に抑え、サックスと鍵盤に思いっきりアドリブを許す高速曲です。タイトルのとおり、スライの創作活動に大きな刺激を受けたのでしょう。「暴動」や「フレッシュ」の時期ですから。このビートの速さを半分に落とすと、ハットフィールドになるかも、と思いました。
クロスオーバーというジャンルを積極的に聴くことは、自分ではもうありません。飽きてしまったからです。流行音楽は混血によって生まれる、はわたしの持論です。が、混血がのっぺりした音楽平均化運動につながることも一方の事実です。2024.05.04
遅ればせながら、2023年新盤について書きます。旧盤(この盤)ではないので…。ちまたでは「ア・ハード・デイズ・ナイト」冒頭の♪ジャ〜ンが全く違うと言われております。わたしは「ヘルプ!」の冒頭コンマ1秒ぐらいが切れているのが大変気になりました。こんなだったかと「1」のバージョンを聞きましたら同様で、シングル仕様だと気づいた仕様です。ロングプレイでは「ヘルプ」の「ヘ」の音が聴こえますもん。新盤で何が聴こえるかと言って、リンゴのバスドラです。全く違うバージョンにさえ聴こえます。
ところでバスドラをベードラと呼ぶ人います。どういう了見なんでしょう。バスクラリネットを、べークラリネットと呼ぶんでしょうか。コントラバスをコントラベーと呼ぶんでしょうか…。バスーンをベーーンと呼ぶんでしょうか。よく考えてもらいたいです。
バスドラが聴こえるようになったと言って楽しんでいたら、「リボルバー」以降、完全にポールのベースとバスドラは融合しちゃっているんですね。正確には「レイン」以降なんでしょうが。収録曲が増えたと言われても、「ロング・トール・サリー」も「シーズ・ア・ウーマン」も「レイン」も「エブリ・リトル・シング」も落ちています。おそるべき前期の充実ぶりです。この2枚組でベスト曲は「タックスマン」だと思います。旧盤で収録されてなくてごめんなさい。新盤と比較するため、旧盤を売っちゃだめです。2024.05.03
英語で「がん」のことを「カンサー」(かに座)と言います。X線写真で胸に広がった病巣の様子が、カニに似ているから。ミニー・リパートンは、胸に広がったがんの罹患を公表し、がん撲滅のため、がん協会の広告塔も務めていました。そんな彼女が終末期にさしかかった病状といっしょに作り上げたレコードになります。「白鳥の歌」です。悲壮感はどこにもなく、ひたすら明るくにぎやかな作風は、逆につらくなってしまうほど、なのでした。
「リターン・トゥ・フォーエバー」という曲があります。東洋的な静けさと凛とした空気にある曲で、彼女特色の可聴域を超えそうな高音は出てきません。石川さゆりがものしそうな演歌です。一方で、スティービー・ワンダーゆずりの過激なリズムのモータウン・ファンクもございます。チャック・レイニーのベースが大変効いています。最後がホセ・フェリシアーノとデュエットする「ライト・マイ・ファイア」です。ジャズ・アレンジが施されたこの曲が、全く別の魅力を見せています。レイ・マンザレクが喜んだんじゃないかと思います。メジャーに転調してから、フェリシアーノとリパートンとのアドリブ合戦。生きているだけで人生儲けものだなあ、と、笑い声まで交えてのフェイドアウト。見事です。2024.05.02
頬のゆるみを抑えることができません。世の中、ハードロックのランキングとか人気投票って好きじゃないですか(最近は、そうでもないか…)。このレコードが上位に来ないどころか、ほとんど雑誌で見かけたことがない。この事実はいったいどういうことなのか。ハードロック・ユーザーの耳は節穴なのか。テッド・ニュージェントを素晴らしいと公言すると、秘密組織に暗殺されるのか。解せません。わたしはこのレコード、ベスト圏外に推します。他のレコードと比較する気にすらならない。「パリス・デビュー!」、「プレゼンス」に匹敵するほど愛着があります。(比較しているじゃないか…)
だって素晴らしすぎます。ギターだけじゃなくって、攻撃的なビート、うなりまくるベースに、ユーザーを黙らせる骨太さ。ほとんど涙ぐんできます。「リビット・アップ」のファンクネスに乗れない人はこの世に存在すらしないと思います。「ワーキン・ハード・プレイン・ハード」のテケテケテケテケを聴いて、墓参りを忘れる人はいないと思います。すみません。興奮して論理が無茶苦茶になってきました。わたしがいくらここで力説したって、あなたはテッドを聴かないでしょう。わかります。びくびくしてるんすよね。いいんだ。わたしのほうが豊かな音楽生活を送るんだから。ずっとびくびくしているがよい、青年。2024.05.01
わたしが子どもの頃、短波が聴けるラジオが流行しました。ソニーがスカイセンサー、ナショナルがクーガーというラジオを発売し、電気好きな子が短波で国際放送を聴く、というわけのわからないムーブメントでした。たいていは、日本向け日本語の国際放送を聴いて、飽きていってしまいます。ところが凝り性のわたしのこと。日本語だけでは満足せず、アフリカから発信する英語、仏語の放送にのめり込んでいったんです。そこで聴けたのが強烈な太鼓と、ビートのあるアフリカン・ポップです。ホルガー・チューカイも同じように短波を聴いて「これは何だ」と思っていたようです。
アフロ・ポップがブルーズを経由せず、欧州に輸入された稀有な例だと思います。メロディらしいメロディは印象に残らず、強烈なビートか、電子楽器の断片を聴くレコードになります。これがメランコリーにべったりと浸かった洋楽耳には、えらく新鮮に響きます。
ダモ鈴木は、公害のある汚い街からドイツに逃げ出そうと語ります。歌ではなくラップで、です。四大公害病とか、コジラ対ヘドラの時代。新潟水俣病は全然終結していなくて、いまだ公害病の認定を受けられず裁判している人々が多くいます。カンは、ユニバーサルな病理にも真面目に向き合っていたのでした。2024.04.30
実のところ、あまり聴いていないのです。スタジオ2枚組ということでお腹いっぱいになってしまって…。トッドのソロは収録時間が長いですから、1枚ものでも充分になります。トッドは、ひとりで全部をやれてしまうアーティスト(パフォーマー・エンジニア・プロデューサー)です。車いじりが好き、とか釣りが好き、という話も聞きませんから、音楽が趣味なのだと思います。同じような傾向を持つアーティストにスティービー・ワンダーとプリンスがいます。三人に共通するのが確固たる世界観を持っているところ。一種宗教味さえ帯びてくるのが面白いところです。トッドは、歌詞が決まらなくても「サムシ〜、エニシ〜」で適当に歌って、がんがん曲づくりしていきます。そのことからこのタイトルになっています。
さて、わたしがよく聴くのがディスク2のほうです。「クドゥント・アイ・ジャスト・テル・ユー」というハイファイ・クリアなポップ曲がその理由。CDプレイヤーを買う時の音試しにかけたくなるような曲でございます。本当に今度やろうかな…。宅録だったトッドが7曲目からビッグ・バンドになる、その切り替えもまた好き。ここからが珠玉で、「アビーロード」に匹敵するんじゃないでしょうか。トッドはシリアスな曲をやる時、照れ隠しに必ずスタジオの会話とかおふざけをやるんです。これも人となりです。2024.04.29
うちの畑はキジの遊び場になっているのです。畑をしようと登ってメス二羽と出くわした時は驚きました。遊ぶだけならともかく、ひまにまかせてサツマイモやジャガイモを抜きにかかるのです。食いもしないくせに…。そんなわけでワイルド・ターキー。ジェスロ・タルとパリスの間に、グレン・コーニックが取り組んでいたバンドです。こう書いただけで、カケレコ・ユーザーのみなさんの7割がレビューを閉じてしまったのがわかります。そのぐらい派手なところがない音楽。こんな音まで押さえたい、と言う人のため、書いてまいりましょう。
まず、コーニックの書く曲は悪くありません。特筆するのは、ゲアリー・ピクフォード・ホプキンズの声です。また、ギターのフレーズ、ピアノにセンスがあってアレンジも冴えています。…ところが、ユーザー受けのするメロディがコーニックには書けないのです。ジェスロ・タル出身だから仕方ない話なんですが。曲をひねってしまうんです。曲調はロックンロールとフォークの両にらみです。わたしはこのバンド、好きで4作全部所持しています。でもそんな人、いないだろうとは思うんです。
パリス関連ということで探し始めました。同じくディテクティブ関連のバジャーと、どうにもイメージがだぶる存在です。96年作の「スティーラーズ・オブ・イヤーズ」は、ファンキーでおすすめですよ。2024.04.28
わたしとマーク・ベノは、なにか前世でつながりがあったんじゃないか。そんなことを考えさせるほど、好きです。ファースト盤も「ミノウズ」に負けず劣らずの大傑作。ライ・クーダー、リタ・クーリッジ(姉さんも)、ブッカーT・ジョーンズが参加している曲もあり、特にライのギターが流れると、「はっ」とします。そうしたゲストが豪華な後半に比べても、前半部分の切なく、みずみずしい曲たちに愛着がありますね。ベノの良さは、ボーカルもギターもたどたどしく、応援したくなる人間臭さがあるところ。なまじ大物感を出していないところが好感なのであります。器用にカントリー・ブルーズも、ジャズもやっています。
「ティーチ・イット・トゥ・ザ・チルドレン」がライの参加する曲です。これ、知らないで聴いたら「誰だ、このギター」となること必至。かっこいいギターとはこう弾くんだぜ、のお手本です。ぶすぶすと焦げるようなブルーズ・ギターなのです。次の「ファミリー・フル・オブ・ソウル」で目立つのが、リタとプリシラのクーリッジ姉妹。ベノがソロ・デビューできたのは、クーリッジの口ききがあったそうなんですわ。最後の「ナイス・フィーリン」は、ゴスペル・フィーリングのある大団円バラード。恋愛ドラマ映画のエンドロールで流れるような素晴らしい音楽です。2024.04.27
日本人男性は、声楽に不向きではないのかと考えているのです。例えに出して申し訳ありませんが、大江千里、小沢健二、福山雅治…。ほとんど声に残響がなく、喉につまようじ穴が開いて空気が漏れているのでは、と思うぐらい。彼らが下手だと言っているのではないです。声量が絶望的に不足しているのでは、と言いたいのです。顔の骨格の問題なんでしょうか。倍音が少ない。そこへ行くとレフト・バンクの面々の声量と倍音は大したもので、羨ましいと思わざるをえません。普通に歌うだけでも耳目を引っ張るだろうに、ありったけの技巧を凝らしてリスナーを惹きつける音楽です。
バロック・ポップと呼ばれています。そんなジャンルがあるんか。チェロやハープシコードをバックに使い、対位法で歌うことからついた呼び名かと考えます。彼らの歌声は、あなたをシルクのように、また羽毛布団のように包み込むことでしょう。「ルネ」と「バレリーナ」が有名。どの曲も同様の水準で聴き飽きることがないです。やっぱり羨ましいです。
「サージェント・ペパー」が67年。その裏でこんな音楽が誕生していたのだから、英国の67年もあなどれません。2024.04.26
今月、50センチの真鯛をおろす、という人生初体験をしました。たっぷり太った天然もの。釣り上げたばかりです。近所の知り合いが「鯛、いるけぇ」と持ってきてくださいました。おろしてわかったのが鯛の骨の硬さです。1時間はかかったでしょうか。刺身にして、焼き物にして、鯛めしにして、あら汁つくって二日間は堪能させてもらいました。田舎暮らし万歳です。ところで、骨まで食べられるサバの水煮缶を発明した人は偉大だと思われませんか。骨まで食べられるのがビ・バップの、この盤です。
ビル・ネルスンの曲づくりに難解なところはひとつもありません。皮から骨まで食べられる極上ポップです。こんなにわかっていいかしら、と高橋源一郎のようにつぶやきます。でも、一歩踏み込んでください。ヘンドリックスを師匠として崇める、というネルスンの本質にあなた、気づきましたか。未来のことを夢見るSF好きの少年、という実像はどうですか。これもヘンドリックスと同じです。自分の気に入ったメンバーで制作した2作め。ネルスンにもう、不可能なものはなかったのです。
この盤でギター弾き倒しをやって満足したんでしょう。次作は脳内のコンセプトをドラマ仕立てに展開する、という冒険に踏み出します。ちなみにわたしは「サンバースト・フィニッシュ」のほうが断然好きです。「ビューティ・シークレッツ」でネルスン三枚おろしを愉しもうと思います。2024.04.25
アワグラスは、ドラマーのジョニー・サンドリンをリーダーとするバンドで、曲もサンドリンがスタンダードを選んでいます。オールマン・ブラザーズ、あるいはディエイン・オールマンの軌跡が知りたくて購入する人がほとんどだと思いますから、この前提は押さえておいてください。グレッグはボーカリストとしての役割しか果たしていませんし、デュエインにいたっては伴奏奏者という位置づけです。簡単に言うと、ホワイト・ソウル。悪くはないですが、演奏はおおよそ凡庸なものです。つまり、この段階では、デュエインの才能を誰も感じていなかったわけです。
アワグラスの拠点は南部ではなくカリフォルニア。ニッティー・グリッティー・ダート・バンドのマネージャーが彼らの可能性を見出し、連れて行ったようです。ところが加州では、誰もアワグラスのやる泥臭さを理解できませんでした。何となくわかる話です。結局バンドは再び南部に拠点を据え直して後日大成しますが、それもまた少し未来のことです。オールマン・ブラザーズ結成までは、デュエインはマッスル・ショールズでスタジオ音楽家をこなして日銭を稼ぐことになります。
わたしはゴフィン・キング曲の「ノー・イージー・ウェイ・ダウン」ぐらいが好きでしょうか。もとになった曲がいいのですけど。グレッグの書く曲が一曲あります。まだまだ、と言ったところです。2024.04.24
ロリー・ギャラガーと言ったら、しゃきしゃきブルーズか、はつらつブギというイメージだと思います。後年のトリオ活動に比べてどうにもハードルが高いのがテイスト時代です。わたしは、テイストの雰囲気がどうもよくわからなくて…。ハードロックというわけでもないし、ブルーズの匂いもあまりしません。いや、たしかにブルーズなんですけど、ロリーの趣味が散らばっていて、なかなか一つの聴きどころに収束しづらいのです。
例えば「イトハズ・ハプンド・ビフォア・イトル・ハプン・アゲイン」というジャズ曲があります。出だしは、速いギターのスキャット、途中でロリーはサキソフォンに楽器を持ち替え(吹き替えか…)ます。ロリーのソロに、渋くかっこよくベースとドラムズがクールについて行くのです。終わりにスキャットに戻ります。フュージョンなんてものではなく、純粋にハードバップ期のようなジャズです。ほかにアクースティックのバラードもあるし、アラブ風なスロー曲もあります。
クリームやジェフ・ベック・グループ第1期のような音の丸みがあって、これは貴重です。71年以降では消えてしまうビンテージの音と言ったらいいでしょうか。ちょっとこもりつつ、豊潤なギターのトーンと残響です。しかし「乗り込んだ」というタイトルと裏腹に、ベースとドラムズは船を降ろされてしまうのでした。2024.04.23
このCDは、わたしにとってまさに「待望」だった代物です。難関だった「ライブ」「ブレイクスルー」を海外ユーザーと直に取引する(必然的にプレ値で)挙に出ていたわたしにとって、メルレンズ・ゴングの最後の宿題だったからです。2011年にesotericが再発するまで、全世界で流通する唯一のCD音源でした。メルレンズ・ゴングにとって最後のメジャー・レーベル作です。早い話が契約を打ち切られてしまった。これがオールドフィールドの「クライシス」の前々年ですから。インストルメンタルに理解がない業界は悲しいです。
冒頭の17分「リーブ・イット・オープン」がメランコリックで冷たくて素晴らしい出来です。ベノワ・メルレンほかビブラフォン隊もいなくなってピエールがひとりで叩いています。どうしてこんな寂しい旋律を思いつくんでしょう。「タイム・イズ・ザ・キー」や「セカンド・ウインド」に勝るとも劣りません。ボン・ロザガのギターも良いです。ジャズ・ロックのひとつの到達点と思って大事に聴いているCDであります。
このあとのピエール・メルレンの道程は、なおさら寂しいものです。スウェーデンのトリビュートに参加したり、自主制作に近い制作を続けたり、ロシアに渡ったり…。盟友オールドフィールドも、自分が儲けているんだからメルレンの口添えしたってよかったんじゃないの…。今ではそう憤慨しています。2024.04.22
「ルー・リード」「トランスフォーマー」「ベルリン」と続いたヨーロッパ制作の後、ルー・リードの初のNY録音。ヨーロッパに渡ってしまったのはジョン・ケイルを追いかけたのか、ストーンズに憧れたのか、デイビッド・ボウイと親交を深めたかったのか。おそらくそのどれもが要因なのでしょう。肝心なのはルー・リードが強靭なR&Bビートを伴って米国に帰ってきたことで、ボウイがソウルをものにする前哨になった気がしています。一説ではリードにはやる気がなくて、録音も一発録りだったとも聞きます。でもリードの歌い方にソウルのビートやコーラスがつくのは悪くありません。
ルー・リードはこのアルバムの翌年、初来日しています。ベルベットをその頃聴く人も少なくて、ラジオで「サリー・カント・ダンス」や「キル・ユア・サンズ」(思春期に彼が精神科に連れていかれた話)がかかってプロモーションされていました。わたしはこのオンエアでリードを知ったので、このレコードに特に愛着があります。今聴き直すと「N.Y. スターズ」 なんてロキシー・ミュージックそのものですね。リードはこのあとライブを2作続けて、ソウル、ロックンロールのシンプルな傾向を深めていくのでそのきっかけになったと思っています。2024.04.21
まだ髪の毛が黒かった頃のジミー・ペイジ参加ライブです。ツェッペリンの曲をクロウズがやる、という意味以上のものを見いだせない代物なんですが、これが内容なかなかよくて。ジミー・ペイジにすれば楽だったし、楽しかったと思いますよ。ベーシックなところはリッチ・ロビンスンとオードリー・フリードがやるわけだし。ペイジは、聴衆の期待に応じてにこにこして、決めのソロだけ弾けばいいわけですから。これでギャラはクロウズの連中よりふんだくってるんだろうな、と。そんなことまで考えるライブであります。
クリス・ロビンスンがロバート・プラントのファンかと言いましたら、どうもそう思えません。持ち歌のほうが気合入っている雰囲気があるからです。選曲は渋いです。「ノーバディズ・フォールト・バット・ミー」とか「インザ・ライト」「ヘイヘイ・ホワッキャナイ・ドゥ」まで演奏してます。クロウズの面々は、やりますねぇ。ツェッペリンは、ドラムズやベースのリフ、パターンが曲の決めになる場合が多いから、カバーやりにくいはずです。譜面どおりにいかないと申しますか。
わたしの考えるツェッペリンのベスト曲「テン・イヤーズ・ゴーン」やってくれています。ツェッペリンの後期ライブはブートでしか聴けなくて、しかも大したものではないから、これは嬉しいです。2024.04.20
きょうは何聴こうかな、と。カケレコさんの中古リストを眺める。おっ、バッドフィンガーか。この盤書いてなかったな。別部屋(廊下ともいう)の段ボールからCDを捜索して、PC部屋へ戻り、プレイヤーにセット。おお、おお、こいつは聴いてなかった。びっくり。…で、今書いています。書いてないどころか聴いてもいないわけです。毎日レビュー上げているんだから音楽くわしいと思っていらっしゃいます? …いいんですよ。職業ライターじゃないんだから。こちとら本業で残業しながらノーギャラで書いてるんだから。
すさまじく良い盤でございます。これをパワーポップと呼んだら叱られます。「ジャスタ・チャンス」の激しさとか、「デニス」の美しさとか、「インザ・ミーンタイム」「ミーンホワイル・バック・アッザ・ランチ」の劇的な盛り上がりとか…。彼らの青臭さは見事に昇華され、ジェネシス級の構成と展開を楽しませる、成熟した音です。彼らの恋愛観は、どうしてこう悲観的なんでしょう。ビートルズの弟みたいな言われ方しますけど、勝ち組ビートルズにこの味は出せません。
これだけ完成した見事なレコードを作り上げながら市場に受け入れられなかったら、そりゃ落ち込むでしょう。バッドフィンガーのせいではない。耳が出来ていなかったマーケットのほうが悪いです。「誰も知らなああい。なんて素晴らしいんでしょう」とミカが語ります。50年後にこれを聴くわたしを予言していたのか、と。2024.04.19
74年の8作めです。コマーシャルなレコードでチャート・アクションを狙ったのに、それに失敗し、それならと目一杯ポップにかじ取りを行ったレコードでございます。ドン・バン・ブリート(ビーフハート隊長)は、このレコードをごみ呼ばわりし、買わない方がいい、などとリスナーに呼びかけたこともあったようです。…がしかし、「トラウト・マスク・レプリカ」を最後まで聴けなかったユーザーにとっては、逆張りでビーフハートに入るきっかけになると思われませんか。しかもこのCD、ほとんど見かけません。これは「買い」です。ほれ、ぽちっとぼちっと(意味不明)。札束を握りしめて、無条件保証と銘打った商品は、このような精神に基づいています。どんな精神なのじゃ。
いや、聴きやすい。2分から3分の曲が次から次に出てきて、しっかりリフもあれば、コーラスもサビもある。隊長の歌声はいつものとおり恐怖を感じます。でもズート・ホーン・ロロと、アレックス・サン・クレアのギターの美しいこと。歪みなしのプレーンな響きは、80年代のモノクローム・セットやキュアを思い起こさせます。「フルムーン・ホット・サン」の冒頭なんて美しすぎて悶絶します。どろどろのブルーズも出てきません。大好きですよ、わたし。2024.04.18
ローリング・ストーンなどが不定期に行うギタリストのランク付けを、みなさん、どんな思いで見ていらっしゃいますか。全部のギタリストを投票者が聴いていない以上、わたしは無価値であると思います。少なくともデュエイン・オールマンとフランク・ザッパがリストになかったら、わたしはその記事を無視します。デュエインを上位に持ってこれないレベルでは、わたしと「趣味」が違うと申しておきましょう。このアンソロジーは、そんなデュエインの神がかり的な冴えを聴くのに十分なラインアップです。頭が下がります。
オールマンの前身、アワーグラスのBBキング・メドレーから始まります。アレサといい、キング・カーティスといい、彼のギターがなかったら音楽が成り立ちません。ボズ・スキャッグズにいたっては主役の座を完全に奪われています。ディスク2は、デラニー・ボニー、クラプトン、オールマンから構成されて、デュエインのベスト・アルバムと聞くのにぴったりです。演奏は、アフリカ系の奏者と比べてもブルーズの真髄に達しているんじゃないでしょうか。魂のギターと言いましょうか。何より個性的でこの音にのめり込みたくなる人間臭さがあります。
ところでカケレコさんの中古入荷リストを見ただけで、どんな人が売り手なのかわかることがあるでしょ。最近のわたしの愉しみでもあります。2024.04.17
なぜわたしは、ブラック・ミュージック本体を聴かずして、白人の行うアフリカ系音楽シミュレーションのほうを聴いてしまうんだろう。このレコードの音を出すとき、いつも感じる疑問です。ストーンズがかなり気合を入れて練習したとしても、アフリカ系人に比べるとリズムの下手さ加減は隠しようがありません。しかし、この不器用なリズムを愛してしまうわけです。また、ギターに関しては、ロン・ウッドの弾くリード部分がかなり気に入っています。特に「ハンド・オブ・フェイト」の。
同じく「チェリー・オー・ベイビー」がかなりレゲエでイイセン行っているとしても、かなり下手なのは隠しようがありません。チャーリー・ワッツやビル・ワイマンをけなしているわけではないです。ジャマイカンの圧倒的説得力に比べての話です。そういった話を総合してもストーンズで最もテクニカルな盤であると思います。そしてブラック・ミュージックの進化に応じて常に自分たちをリニューアルするのが、彼らの強みです。
ただし、この盤を金科玉条のように論じてありがたがるプロ筋の人のコメントには賛成できません。それなら本体のアフリカ系音楽を聴くべきです。ストーンズという不器用で勤勉な音楽集団の成果ととらえています、わたしは。スティクスの「ピーセズ・オブ・エイト」がこのカバーのパロディであるのは周知の事実。2024.04.17
わたしにとってピンク・フロイド初体験となった盤であり、みなさんも大好きな盤。なので内容について書こうと思いません。A面もB面もたくさん、たくさん語られています。…で、カケレコさんの気になるキャプション「ブレックファスト・ティップス」について書こうと思います。
ドイツ語と英語で書かれた二つ折りのカードがついています。英語のほうは、伝統的なベドウィンの結婚式晩餐と題され、いわゆるレシピが載っています。この内容がすごいのです。まず必要な材料が
中ぐらいのラクダ 1頭
中ぐらいの北アフリカヤギ 1頭
春の子羊 1頭
大きめの鶏 1羽
卵
ガーリック たくさん
新鮮なコリアンダー たくさん
固ゆでした卵を鶏に詰め、鶏を子羊に詰め、子羊をヤギに詰め、ヤギをラクダに詰める、と。これをゆっくりローストして、晩餐にせえ、と言っているのです。こんな豪快な料理、聞いたことありますか。それに、このレシピとピンク・フロイドに何の関係があるのでしょうか。わたしは、このカードがCDケースから出てきた時、何かの間違いかと思っていました。カケレコさんのキャプションで、このカードは「仕様」だったのだと改めて思っているところです。
アランのサイケデリック・ブレックファストだから…ですか。わからんなあ、このカードの真意が。キャバクラの女の子に話題を振る時、ネタにしましたけど。2024.04.15
ほぼ10代でデビューした彼らもキャリアは、もうすぐ20年。結婚し、子どもも生まれているわけで、もう立派な南部のファミリーを形成していることでしょう。この盤の前に「ブラック・トゥ・ブルーズ」というEPがリリースされました。ブルーズ・スタンダードを彼らなりにカバーしたものです。次のロングプレイ盤を、ブルーズ大会になるんだろうと予想していたわたしは、半分裏切られました。相変わらずの爆音ロックだったからです。でも、それは心地よい裏切り。きちんとブルーズをやった成果は反映されているし、カントリーを軸とした聴かせる曲もあります。
電気ピアノのアルペジオから始まる「マイ・ラスト・ブレス」は、爆音でないブラック・ストーン・チェリーの新機軸です。ギターはスライド。これ、明るくて落ち着いていて、いいじゃないですか。続く「ダンシン・インザ・レイン」では、ウォーレン・ヘインズがコーラスで参加しています。ガバメント・ミュールとBSCは初共演になるんでしょうか。意外です。
ブリティッシュ・ハードはもはや、米国にしか生き残っていません。矛盾した言い方ですが、わたしはそう考えています。BSCの音を聴くと、ハードロックにも(グランジでない、メタルでない)やりようがあり、可能性がまだまだあることがわかります。2024.04.14
明らかに叩き過ぎのニール・パートに、明らかに声張り上げ過ぎのゲディ・リーです。おまけに8分にわたる「バイター・アンド・ザ・スノードッグ」があって、これがあるために、カナディアン・プログレの起原と言われてしまっています。しかし鍵盤なしに「プログレ」は、ないでしょう。わたしにはファーストの延長で、ツェッペリンに影響されたヘビーロックと聴こえます。80年代のラッシュを好きなかたも、この盤には首をかしげる向きがあるかも知れません。
彼らには不思議と汗の匂いがしません。欧州的な音と言っていいと思います。ヘビーロックにしては全部のパートがテクニカルです。ニール・パートの趣味は読書なんだそうです。だんだんこの傾向が激しくなっていき、彼は幻想的な物語を書くようになります。この盤では、まだ小手調べ。旧A面を推す人が多い中、わたしが好むのは旧B面です。「フライ・バイ・ナイト」は楽しいですし、「メイキング・メモリーズ」の、「ギャロウズ・ポール」みたいなアクースティック・ギターが好きです。
でもやっぱり…ゲディ・リーの歌い方なんですよね。もっと普通に歌ってくれんかな、と。聴いていても、こちらの肩に力が入って来て、どうにも落ち着きません。2024.04.13
ブレンズレー・シュバルツが、アル・ステュアートに帯同する現在のツアー後に解散する意向であることが明らかになった。NME本誌が今週つかんだ情報。バンドのベーシストであり、主要なコンポーザーであるニック・ロウが、ソロとしてのキャリアを望んでいることからと思われる。ロウ以外のメンバーが新たな形でバンドを継続するかは、現在不明。彼らは、進行中のアル・ステュアート・ツアー後に、解散前のギグを二度こなす予定としている。…というのが、当時の記事です。つまり、ブレンズレーを解散させたのは、ロウの脱退だったわけで、そのとばっちりで未発表に終わったレコードです。
わたしの所持しているのは88年DECAL盤です。カバーアートが違っているけれど同じなんだろうな…。「ウィ・カン・メス・アラウンド」は、ロウの「アボミナブル・ショウマン」で再演されています。この曲の出来に不満だったんでしょうねぇ。あとロウの代名詞「クルール・トゥ・ビー・カインド」も、このレコード収録です。泣きそうになるじゃないですか。ビートルズの「テル・ミー・ホワイ」や、ボビー・ウーマックの「イッツ・オール・オーバー・ナウ」は、少し力不足。ブレンズレーより、ニック・ロウの多重録音のほうが良い、というのがなんとも、です。
「クルール・トゥ・ビー・カインド」のベースラインの凄さに恐れ入りました。ロウは、改めてすごい人です。2024.04.12
ソロになっての3作め、5作めになります。「スイート・ハーモニー」は、別のページでレビューした記憶があるので、「オープン・ユア・アイズ」中心に書きます。3曲め「バーズ・フライ・サウス」は、印象的なハーモニカで始まります。これを吹いているのがスティービー・ワンダー。冬になると南に去る鳥について歌っていて、今の季節とちょうど逆。白鳥や雁は群れで移動するので、季節の変わり目を感じることができますけれど、南に飛んでいく鳥って、いつの間にかいなくなる印象です。
印象はフュージョンに近いセンスの良さを感じました。でも、そこはルーツ音楽に造詣の深いマルダー姐さんのこと。聞き流すようなAORにはならないのでした。姐さんの良さは、いわゆる「上手い」歌い手ということに止まりません。わたしは姐さんの良さを、揺らぎと裏返るところにあると思っています。声域が狭いことを逆手にとり、ファルセットと地声を自由に使うのが、妖艶といいますか、熟女といいますか。(熟女って差別言葉ですけど。)ちょっと独特のポジションにあるボーカリストで、聴いていただくしかありません。
「ダンシン・イン・ザ・ストリート」が、ジョン・ハイアットの書くR&R。妖艶だけではない、芯の強さを表現した曲です。彼女のベストは、ファースト、セカンドと言われます。わたしはどのCDを聴いても新鮮です。2024.04.11
67年から71年までのシングル集でございます。スティービー・ワンダーと言ったら、何といっても72年「ミュージック・オン・マイ・マインド」から76年「キー・オブ・ライフ」までの鬼神のごとき活躍です。無論これらの音楽は素晴らしい。そして自身の力をためていた時期、モータウンから自分のプロデュース権をむしり取るまでの時期の音楽も素晴らしいのです。わたしは子どもながらヒット・チャートでスティービーの名前を知っていました。このレコードは、知っている曲ばかり…と書きたいところです。でも残念ながらそれぞれの曲名は、このCDで勉強しました。
「ウイ・キャント・ワーク・イット・アウト」は、ポール・マッカートニーをして、この曲のカバーでベスト、と言わしめています。後年のスティービーとの共演は、この曲が伏線になっています。「マイ・シェリー・アモール」は、R&Bというより、欧州のお洒落な歌謡曲のようです。この時期スティービーは、曲づくりのほかに、多様な楽器の演奏もマスターして、一人でバンドに匹敵する音を出しています。そして歌うのも無論見事。天は二物以上のものを彼に与えたのでした。
音は過激でも、曲は丸くて呑み込みやすいです。レビュー未満の自分の筆力を呪います。2024.04.10
マディ・プライアの喉を聴かせる、というより、彼女の曲づくりの妙を聴かせる意図なのが明らかです。カケレコさんのレビューで「アリ・ババ」が紹介されています。これはテンポのよいロックンロールで、途中の中近東風演奏が笑わせます。ミスター・ビッグの「ザンビア」を思い出してしまいました。ほかに「イン・ファイティング」では覚えやすいコーラスを持つ、いわゆるポップ曲にチャレンジしています。トラッドの内側に閉じこもるつもりはないわ、というプライアの意思を感じてしまうのでした。
ギターがところどころで活躍します。ペダル・スティールのBJコールが起用されているのも珍しいです。ところでマディ・プライアの声は、アニー・ハズラムに似ていやしませんか。ルネサンスとバックの音が全然違うので、今まで気づきませんでした。
わたしはスティーライ・スパンもマディ・プライアもつまみ食い程度のユーザーなので、あまり踏み込んだことが書けません。舩曳将仁の紹介が理解の助けになりました。舩曳さん、ありがとうございます。2024.04.08
クイーンはライブ向きのバンドではありません。ジャムやインタープレイに特質があるわけではないし、優秀なソロ・プレイヤーがいるわけでもないです。音の積み上げと曲想の多彩さが彼らの強みで、これはスタジオ・ミュージシャンに向いた制作方針です。同じような作りこみをするバンドがボストンですが、ボストンのライブは実はすっかすかです。(だから未だ公式ライブがありません。)
イエスのように完璧なスタジオ録音の再現をするのでもなく、彼らはどうしてライブで支持を集めるバンドになれたのか。これはフレディのパフォーマンスとブライアンのギター中心にアレンジをつくり直しているからです。だからライブで、彼らはシンプルなロックンロールを演奏する体育系のバンドに変形します。逆に考えると個々の曲の基礎ができていなければ、この芸当は無理です。ビートルズの曲は誰が演奏したってビートルズだと言われます。クイーンにもビートルズに似た、曲の地力の強さがあります。さまざまなライブ音源が今ではあります。でも彼らが本当に輝いていた70年代の実況録音盤は別格だと思います。ほとんどオーバーダブもありません。丸ごとクイーンに向き合える時間は至福です。2024.04.07
エリック・クラプトンは変わった人で、十分ギターが上手いのに自分より偉大なギタリストを探し求めて「師」としてあがめて活動するところがあります。まず、ジミ・ヘンドリックス、次にデュエイン・オールマン、そしてJJケール。デラニー・アンド・ボニーのツアーに帯同していた、カール・レイドルほか腕利きのメンバー三人を引き抜き、デュエインまでおいで願ってバンドを作ってしまうのだから、この頃の彼は何かにすがらざるを得ないほど追いつめられていたのだと思います。(原因は不倫とジャック・ブルースでしょう。クリームでは大人と子どもぐらい意見が合わなかったでしょうから。)
このレコードの全部の曲が好きな人ってどれぐらいいらっしゃるでしょうか。全部の曲の出来がいいわけではないと思います。ただ、時々音楽の神が下りてきた、としか思えない曲をつくることがあります。この作品の前半部は、わたし実はあまり聞いていません。なんか、無理やりスワンプに逃げ込んでいるような気がするから。ところが、曲を聴き進むうち予定調和の南部世界は破たんしてくるのです。「テル・ザ・トゥルース」以降、どんどん切ない世界になっていきます。
「女を愛したことがあるかい?」と見栄をきったと思いきや、「リトル・ウイング」まで演ってしまう。この切迫感こそが「ロック」です。 もし、このレコードをこれから求めて聴こうとする方がいらっしゃるなら、休み休みしながら聴いてみてください。わたしの知り合いでも、これを「通し」で聞いている人はあまりいません。最後のつぶやきのような曲が、また物悲しくて、この曲が終わったときに、大きな空洞が心にできたような気がします。こんな構成は、情念の人、クラプトンでなくてはできません。2024.04.06
子どもの頃、ラッシュとマホガニー・ラッシュの区別がついていなかったのがわたしです。わたしの自戒を込めて、ですけど、「ハードロック・その他」に分類されてしまう哀しい存在です。どうしてかと言いますと、カナダ出身であることと、ハードロックとしてインパクトに欠けるところか、と。あと、ビッグネームに比べて時代がくだっていることも彼らにとっては不利でしょう。ポジションはナザレスに似ています(音は全然違いますよ)。インパクトと言いましたが、フランク・マリノの声もギターも優しすぎるんですよ。フュージョンとファンクを効かせた音は素晴らしいです。子どもにゃわかるまい、のロックです。
このレコードは、名作「ライブ」の直前のスタジオ録音でもあり、曲が抜群によろしい。ギターも独自の色を開拓した時期と思います。技量は最高。メロディに独自のセンスを持っていまして、とろけそうになります。「ドラゴンフライ」も「ジ・アンサー」も「IV」も良いですね〜。
北米のトリオ・バンドは、カクタス、グランド・ファンクみたいに爆音になるケースがほとんど。ラッシュもマホガニー・ラッシュも爆音で勝負する人たちではないのがお国柄なんでしょうか。いけない、またこんがらがってきました。2024.04.05
手術台の上で出会ったザ・ビートルズとザ・バンドです。もはやミシンとこうもり傘だったか、キツネとタヌキだったか出典は忘れてしまいましたが…。イアン・ゴム加入で湿度と切れの良さが加わりました。というより、ザ・バンドを好きすぎて真似っこしているうち、どこか吹っ切れたんでしょう。いわゆるブレンズレー・シュバルツってどんな音か、と訊かれたら、この盤を差し出すことが適切です。転調とコーラスとギターの揺れで泣きそうになります。これはわたしがザ・ビートルズを好きすぎるから。ドラムズに合わせたオルガンのフィルで泣きそうになります。これもわたしがザ・バンドを好きすぎるからです。
実際、ボブ・アンドリューズは、ガース・ハドスンを世界最高のオルガニストと崇拝し、自分は彼のように弾けないと、涙を流していたそうです。
美しい話だと思います。同じようにブレンズレーのギターは、ジョージ・ハリスンとロビー・ロバートスンを行ったり来たりしています。コピーが上手いだけじゃないか、と思われますか。ザ・ビートルズとザ・バンドですよ。英国の魂と米国の良心をまるっとひとつの音にしてしまったようなもの。大変なことです。スタイル・カウンシルの頃のポール・ウェラーが、この時期のブレンズレーを好きだったことも分かりました。いい盤でございます。2024.04.04
桜の季節になってまいりました。桜と陽気と雪解けは、人々を狂気に駆り立てるらしく、職場に持ち込まれる苦情、問い合わせが格段に増える時期であります。新入社員を研修と言うかたちで隔離するのは、理にかなっているのかも知れません。一方、古参の社員にとっては、退職者の穴埋めを現有勢力の頑張りだけで対応せざるをえず、非常にストレスが増える時期です。花見という行事を持っている会社さんを羨ましく思います。でも花見なんて職場でやっている事業者さんは、このご時世、危ないんじゃないでしょうか。それとも勝ち組なのか。
映画「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」は見ていません。プリンスがチェリー・ボーイとは思えず、いやしかし、観念的にはチェリーだったのかな、とも思います。彼にとって音楽と同等以上の価値とアジテーションになったのがセックスであります。それも日本人には理解不能なかたちで。このレコード、ずばり密室での興奮とカタルシスがテーマであると思っております。ビートはファンクです。でも「パープル・レイン」「アラウンド・ザ・ワールド」の頃から比較し、極限まで音数を削って「静かに」仕上げた音が異様な迫力で迫ってきます。この時期のプリンスを、スライ・ストーンと関連付けた渋谷陽一氏の見立ては慧眼。スライの「ゼアズ・ライオット」に似た静かな空間が素敵です。2024.04.03
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お品物に振込先を記入した用紙を同封いたします。ご注文日より2週間以内に、お振込ください。
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現金の他、クレジットカード、デビッドカードでのお支払いが可能です。
商品代金、送料の他に宅急便コレクト手数料330円(税抜300円)をいただいております。
中古CDを安心してお買い求めいただけるように、日々サービス面の向上を目指しております。